苗踏み餌取り 農家困惑 佐渡・放鳥トキ

苗踏み餌取り 農家困惑 佐渡・放鳥トキ 新潟日報(6/24付)

野生下で38年ぶりに巣立った幼鳥を含め、佐渡では現在、自然の中で60羽余りのトキが生息している。島民はトキの野生定着を望むが、営巣林近くの農家か
らは「トキが水田の苗を踏んでいった」と困惑する声も聞かれる。ひなのために餌を取る親鳥を静かに見守ったものの、一部の水田では水稲の成長が妨げられ、
地域とトキがどう共生していくか、あらためて課題を突き付けられた。関係者からは「トキが水田に現れた農家にはメリットがある仕組みが必要」との意見も出
ている。

 「ひなに餌を与えるためなのだろう。親鳥が何度も田んぼに来て、苗を踏んでいった」。そう話すのは、営巣木周辺に約1ヘクタールの水田を持つ兼業農家の
男性(58)。ふ化が確認された5月上旬以降、自ら耕作する数枚の水田で、あぜ際を中心に被害に遭い、そのたびに苗を植え替えた。この男性の水田では、ひ
なの巣立ち後、飛来する回数は少なくなったという。

 「トキの親子が集落にいるのはうれしい。ただ農家が困っているのも事実」。同じように被害を受けた農業男性(80)は複雑な胸中を語る。男性は環境省や市に対し、被害の調査を求めた。「トキとの共生を掲げる以上、農家の気持ちも考えてほしい」と訴える。