希少ツルの大群が四国に 保護団体、越冬地定着めざす 日本経済新聞(11/30付)
絶滅危惧種のナベヅルが10月下旬以降、300羽ほど四国各地に飛来している。ツルの越冬地で有名な鹿児島県・出水平野以外で、これほど多くが確認されるのは珍しい。ツルは気に入った場所に翌年も戻ると考えられ、四国が国内第2の越冬地として定着するのか、この冬が正念場。警戒心の強いツルを怖がらせないよう、保護団体などはそっと見守っている。
高知県四万十市で今年最初の飛来が確認されたのは10月28日。11月11日には約240羽の大群になった。地元保護団体の木村宏さんによると、例年は10羽も来ないといい「餌を食べる間も周囲を気にして緊張した様子。越冬に適した場所か探っているようだ」と話す。
日本野鳥の会などによると、愛媛県西条市や徳島県海陽町などでも群れを確認。11月中旬には徳島、愛媛、高知3県で計約300羽に上った。
ナベヅルはロシア南東部や中国東北部で繁殖し、秋になると日本や韓国南部、中国の長江下流域に渡って冬を越す。かつては日本全国に飛来していたが、乱獲や湿地の埋め立てなどでほとんど見られなくなった。
一方、給餌など保護を続けた出水平野では世界のナベヅルの9割、マナヅルの5割が越冬するように。1万羽以上が集まるため、感染症が発生した場合に大量死する恐れがある上、農作物への食害も懸念される。
近年は高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染が相次いだことなどから、環境省は「出水への一極集中は種の存続を脅かしかねない」と、山口県周南市などを候補に越冬地の分散を検討してきた。ただ人為的にツルを移動させるのは困難で、計画は進んでいない。
そんな中で起きた集団飛来は「越冬地分散に、またとないチャンス」(同省の担当者)。神経質で警戒心が強いツルを驚かさないよう、自然保護団体などは飛来地周辺での猟銃の使用やねぐら近くへの立ち入り、見物客の接近を自粛するよう四国4県に要望した。
なぜ急に四国に来るツルが増えたのか。日本ツル・コウノトリネットワークの金井裕会長は「近年、中国の越冬地の水環境が変わったようで、日本や韓国に渡る個体が増えている。新しく日本に来たツルが、いい場所はないかと探し回っているのかもしれない」と分析している。〔共同〕