ナベヅル飛来相次ぐ 四万十市

ナベヅル飛来相次ぐ 四万十市 読売新聞(12/8付)

11月11日最多239羽

 毎年、鹿児島県出水地方に集中して越冬するナベヅルが、10月以降、県内に相次いで飛来している。特に四万十市では、ツルの越冬地づくりに取り組む市民グループ「四万十つるの里づくりの会」と、高知野鳥の会、日本野鳥の会高知支部によると、11月11日には、観察記録が残る2008年度以降では最多となる239羽が飛来。現在残っているツルが越冬する可能性もあり、関係者は「静かに見守ってほしい」と呼びかけている。(広浜隆志)

 ナベヅルは、ロシアや中国で繁殖し、10月から3月に日本に渡来する渡り鳥。穀物の落ち穂や昆虫、小型水生生物を食べる。夜間は、外敵を避けるため深さ10~20センチの川や湿地、ため池などをねぐらにする。日本では、かつては全国に飛来していたが、現在は保護対策が取られている出水地方にナベヅルとマナヅルが1万羽あまり飛来し、このうち、ナベヅルは世界の約8、9割が越冬しているとされる。

 越冬地が集中することで、鳥インフルエンザなどの感染症による大量死を防ごうと、環境省と農林水産省、文化庁が03年、中村市(現・四万十市)、山口県周南市の八代盆地、佐賀県伊万里市、長崎県有川町(現・新上五島町)を、分散候補地として公表するなど、越冬地の分散化を探っているが、十分な成果は上がっていないという。

 このうち、四万十市では、「四万十つるの里づくりの会」が、四万十川支流中筋川流域に湿地や餌場を整備し、飛来の呼び水となるデコイ(模型)を設置。13年には人工的に整備した湿地としては初めて2羽が越冬。14年は飛来したものの、越冬はしていなかった。

 里づくりの会と、高知野鳥の会、日本野鳥の会高知支部は7日、同市で記者会見を開き、今季のナベヅルの飛来状況を発表。発表によると、今季は10月29日に29羽の飛来を確認したのが始まりで、11月11日に239羽を確認した。その後は、同月15日の狩猟解禁で猟銃の発射音がしたり、今月1日に落ちアユ漁が解禁され、ねぐらにしている四万十川の浅瀬が騒がしくなったりしたことなどで激減したが、7日現在、16羽が滞在している。

 ナベヅルの多くは、飛来地として知られる出水地方に向かったとみられるが、滞在中のツルは四万十市で越冬する可能性があるという。

 今季のナベヅルは、特定の餌場を持たず、日中、中筋川流域の田んぼを転々としているという。里づくりの会は、新聞に折り込みチラシを入れたり、飛来地周辺に立て看板を置いたりして、注意を呼びかける。武田正会長は「何とか越冬させたい。200~300メートル以上離れて観察するなど、配慮をお願いします」と訴えている。

ナベヅル 紀の川流域で確認 絶滅危ぐの渡り鳥 越冬に期待

ナベヅル 紀の川流域で確認 絶滅危ぐの渡り鳥 越冬に期待 ニュース和歌山(11/21付)

中国北東部と近辺で繁殖し、日本などで越冬するナベヅルが11月初旬から和歌山市内で確認されている。九州で冬を過ごすことで知られるが、市内に留まるのは珍しく、野鳥観察者は「大きくて美しい鳥。市内での越冬が期待できそう」と注目している。

 ナベヅルは、中国やロシア、モンゴルで繁殖し、主に日本で越冬する。体長約1㍍、羽を広げると、幅2㍍になる大型のツルで、体は灰色、首から上が白く、頭頂部は赤い。世界には約1万羽いると推定され、環境省レッドリストで絶滅危ぐⅡ類に指定。個体の約9割が鹿児島県出水市で冬を越すが、西日本では和歌山や三重、徳島、高知で飛来情報がある。特にここ5年は和歌山に姿を見せることが増えており、一度に20羽が来た年もあった。

 今年、和歌山市内に現れたのは11月初旬。紀の川の中洲に9羽の姿が確認された。この群れは紀の川を拠点に西和佐や岡崎の田畑を行き来し、3日には西和佐の田畑で、日本野鳥の会県支部の中川守支部長ら複数の愛鳥家が撮影に成功した。中川支部長は「3家族で子どもも3羽いました。仲が良くて見ると感動します」と話す。

 紀の川にすむ国の特別天然記念物コウノトリの観察を続ける土橋進さんも流域の中洲で、コウノトリと一緒にいるナベヅル9羽の姿を認めた。17日早朝には、ナベヅル13羽が紀の川近くから山口地区方面へ飛び立つ姿を目撃した。土橋さんは「最初の9羽と同じ群れなのか分かりませんが、滞在は長期になっています。越冬も期待できるのでは。コウノトリも長く留まっていることからも紀の川流域が鳥にとって暮らしやすい環境になっていると思います」と見守る。

 一帯ではカワウとアオサギを対象とした有害鳥獣捕獲事業が行われ、愛鳥家にとって懸念材料だったが、ナベヅルやコウノトリの飛来を受け、和歌山市は今年度の中止を発表した。中川支部長は「みんな喜んでいます。一般の観察や撮影もきちんと鳥との距離をとってほしい」と話している。

写真上=11月3日、 和歌山市内の畑に現れたナベヅル
同下=コウノトリと一緒にいる姿も

希少ツルの大群が四国に 保護団体、越冬地定着めざす

希少ツルの大群が四国に 保護団体、越冬地定着めざす 日本経済新聞(11/30付)

絶滅危惧種のナベヅルが10月下旬以降、300羽ほど四国各地に飛来している。ツルの越冬地で有名な鹿児島県・出水平野以外で、これほど多くが確認されるのは珍しい。ツルは気に入った場所に翌年も戻ると考えられ、四国が国内第2の越冬地として定着するのか、この冬が正念場。警戒心の強いツルを怖がらせないよう、保護団体などはそっと見守っている。

 高知県四万十市で今年最初の飛来が確認されたのは10月28日。11月11日には約240羽の大群になった。地元保護団体の木村宏さんによると、例年は10羽も来ないといい「餌を食べる間も周囲を気にして緊張した様子。越冬に適した場所か探っているようだ」と話す。

 日本野鳥の会などによると、愛媛県西条市や徳島県海陽町などでも群れを確認。11月中旬には徳島、愛媛、高知3県で計約300羽に上った。

 ナベヅルはロシア南東部や中国東北部で繁殖し、秋になると日本や韓国南部、中国の長江下流域に渡って冬を越す。かつては日本全国に飛来していたが、乱獲や湿地の埋め立てなどでほとんど見られなくなった。

 一方、給餌など保護を続けた出水平野では世界のナベヅルの9割、マナヅルの5割が越冬するように。1万羽以上が集まるため、感染症が発生した場合に大量死する恐れがある上、農作物への食害も懸念される。

 近年は高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染が相次いだことなどから、環境省は「出水への一極集中は種の存続を脅かしかねない」と、山口県周南市などを候補に越冬地の分散を検討してきた。ただ人為的にツルを移動させるのは困難で、計画は進んでいない。

 そんな中で起きた集団飛来は「越冬地分散に、またとないチャンス」(同省の担当者)。神経質で警戒心が強いツルを驚かさないよう、自然保護団体などは飛来地周辺での猟銃の使用やねぐら近くへの立ち入り、見物客の接近を自粛するよう四国4県に要望した。

 なぜ急に四国に来るツルが増えたのか。日本ツル・コウノトリネットワークの金井裕会長は「近年、中国の越冬地の水環境が変わったようで、日本や韓国に渡る個体が増えている。新しく日本に来たツルが、いい場所はないかと探し回っているのかもしれない」と分析している。〔共同〕